雑誌『形成外科』に論文が掲載されました
皮膚科・形成外科向け学術誌『形成外科』(克誠堂出版)第55巻 第10号にHARG療法に関する研究論文「幹細胞由来因子の毛髪再生への応用」が掲載されました。
毛髪再生効果が継続するHARG療法
HARG療法は、単に数種類の成長因子(グロースファクター)を投与して、髪の毛をつくる細胞を活発にするだけでなく、頭皮の細胞活性を上げるので、当院の患者様は投与を終えた後も、効果が落ちずに発毛や毛髪の再生、発毛状態の維持が継続しています。
それに対し、よくHARG療法と混同されるグロースファクター療法は、数種類の成長因子(グロースファクター)を投与している間のみ毛髪の再生が促進されます。
言い換えるならば、HARG療法は、グロースファクター療法+細胞活性療法だと言えます。
また、グロースファクター療法を含む他の治療法では、今回のHARGの論文のように、一定の条件で発毛本数まで比較検討した論文は出されていません。
論文の内容
治療方法
HARG療法は、症状の進行予防を行うとともに頭皮の再生と発毛を促し、継続的に育毛する治療方法です。また、患者様の症状に合った治療法を組み合わせて治療にあたっています。
今回は、以下の治療法を組み合わせ、治療にあたりました。
1) 発毛・頭皮改善治療:HARGカクテルを用いた発毛メソセラピー
細胞の活性化に必要な成長因子を含んだAAPEとブフロメジル、ビタミンH、ビタミンB群、コエンザイムQ10など、様々な成分を含んだ育毛メソカクテルを混和させたHARGカクテルを頭皮に浸透させ、 3週間おきに4~8回浸透を繰り返し、その後は、症状に応じて1~2ヵ月に1回ずつ浸透を繰り返しました。
2) 育毛治療:育毛メソカクテルを用いた育毛メソセラピー
脱毛症の進行予防だけでなく、既存の毛髪の育成効果を期待するために育毛メソカクテルを用いた育毛メソセラピーを行いました。
3) 進行予防
AGAに対してはフィナステリド(プロペシア、万有製薬社製、日本)内服を第一選択として行いました。
研究結果
脱毛症の計21人(男性16人、女性5人、年齢27~69歳)に対して、AAPEによる治療を2回施行し、1ヵ月後に治療前後の毛髪本数を計測しました。増加した毛髪本数の平均は31.4本(1㎠あたり)、増加率は29%(1㎠あたり)となりました。また、治療後の本数に、男女差や治療前のプロペシア服用の有無による差は認められませんでした。
2回治療後1ヶ月の毛髪本数
治療前 (本数) |
治療後 (本数) |
増加 (本数) |
増加率 (%) |
|
---|---|---|---|---|
全員 | 109.88 | 141.28 | 31.41 | 29% |
男性 | 117.76 | 141.42 | 23.66 | 20% |
女性 | 82.72 | 140.85 | 58.13 | 70% |
プロペシア服用あり | 120.64 | 146.67 | 26.03 | 22% |
プロペシア服用なし | 110.72 | 130.40 | 19.68 | 18% |

66歳 女性の症例

主訴 | つむじ・頭頂部 |
治療期間 | 5ヶ月 |
治療回数 | 6回 |
費用 | ¥1,230,000 |
この患者様は、58歳よりつむじ・頭頂部の薄毛の進行が気になるとのことでウィッグをつけておられ、HARG療法を決められました。
治療後すぐに経過が良くなり、2回目の治療後には毛髪の再生が見られました。
全6回の治療後には、ご本人様も結果に満足いただけるほど、頭頂部の毛髪が生え揃っていました。
考察
①女性に多い栄養障害による脱毛症にも育毛効果を期待できる
HARG療法で使用する育毛メソカクテルは、ブフロメジルやビタミンH、ビタミンB群など多くの成分を含むため、ミノキシジルなどの単独投与に比べ、貧血や低血圧、ダイエットなどによる栄養障害などが原因として多い女性の脱毛症に対しても育毛効果を期待できる。
②進行予防・育毛だけでなく、発毛による生え際の前進
AGAの症例では、フィナステリド(プロペシア)が広く投与されているが、育毛・増毛効果を得るまでには長時間を要し、その効果も進行予防の面では限定的である。既存の治療方法では、毛髪育毛効果と進行予防が主であり、「抜け毛」の減少、毛髪の「太さ、硬さ、こし」の改善により、薄毛を軽減している。しかし、HARG療法では、発毛を導くことによりAGAで顕著な後退した前額部(額)の増毛や中等度以上の頭頂部の脱毛症に対しても増毛効果を得られている。
③早い段階での毛髪再生効果を確認
2回目の治療1ヵ月後(治療開始後約3ヵ月)の評価においても毛髪再生効果を認めることがわかり、早い段階において発毛および毛周期の中の成長期である毛の増加が見られました。また、4回治療後,6回治療後においても毛髪増加が認められている。
※福岡大太朗・菅浩隆 「幹細胞由来因子の毛髪再生への応用」 (『形成外科』第55巻 第10号, 克誠堂出版, 2012)を要約して作成しています。
※画像は、福岡大太朗・菅浩隆 「幹細胞由来因子の毛髪再生への応用」 (『形成外科』第55巻 第10号, 克誠堂出版, 2012)より引用しています。